機関・航海(新造時)

軸  数 4
回転数 [rpm] 210
機関形式 ・基数 技本式・高低圧2段
ギヤードタービン8基
ボイラ形式・基数 ロ号艦本式(専焼)11基
     (混焼) 8基
蒸気温度 [℃]
  圧力 [atm]
飽和
19.3
出 力 [SHP] 131,200
速 力 [kts] 32.5
航続力 [nm/kts] 8,000/14
燃料積載量 [T] 重油:3,900
石炭:2,100
 巡洋戦艦の缶・主機をそのまま継承し,131,200馬力の高出力艦である。一方で基準排水量は14,000t余りも減少したため,速力は2.5kt増加して32.5ktとなった。しかし公称性能を偽る日本海軍の伝統により,対外的には28.5ktと発表された。ボイラー数は19基に達し,蒸気条件も飽和蒸気を使用するなど,大正時代の設計による旧世代艦であることを感じさせる。

 高速力故に「加賀」より優秀だったといわれる「赤城」だが,重油専焼だった加賀に対して石炭を燃やす混焼缶を搭載しており,この点では劣っていた。

 艦形図に示したように煙突は2本あり,大型の下向き煙突と小型の上向き煙突を装備する。専焼缶の排煙は大型煙突から,混焼缶の排煙は小型煙突から排煙される。専焼缶の場合,吸気側にブロアが装備されその圧力で排気されるため煙突が下向きになっていても問題ない。しかし混焼缶で吸気を加圧すると投炭口から火炎が吹き出してしまうため,上向き煙突として高温の排煙の密度差による吸い出しにより自然換気せざるを得ない。

 上面形に示したように,煙突との重量バランスのため上部飛行甲板は左舷にオフセットされている。これに伴い高角砲の支柱なども左右舷で異なる。

 下向き煙突には大傾斜時の水没を考慮して,上部に非常用排煙孔が設置された。また排気の乱気流による着艦機への悪影響を防ぐため,排気に海水のシャワーを浴びせて冷却する「熱煙冷却装置」が設置された。この装置は着艦時にだけ使用し,その際は煙突から白い水蒸気が吐出されているように見える。下向き煙突と熱煙冷却装置の使用実績は良好で,以後の日本空母の標準となった。

 上向き煙突からの排煙は飛行甲板上の気流を乱すが,飛行機の発着艦時は混焼缶は停止させ専焼缶のみで航走した1)。したがってこの時は全速32.5ktは発揮できないはずである。また航空機の運用の度に熱容量の大きな缶の停止・始動を繰返すのは運用上かなり煩雑であったと想像され,「赤城」の欠点の一つである。また石炭の燃焼に伴う煤は艦載機にも少なからず悪影響を及したと推測される。赤城の翌年に竣工した「加賀」は戦艦時の混焼缶から全て専焼缶に変更されており,「赤城」も同様の設計変更を行うべきであった。「加賀」の煙突設計失敗に隠れてあまり問題とされないが,「赤城」に関しても欠点は少なくない。

 艦の戦闘力とは関係ないが,石炭を燃料とする場合その補給・投炭は非常に労力を要し,乗員の負担軽減・人員削減の観点からも専焼缶の方が望ましい。ただし混焼缶が使用されたのは石油資源を自給できない国情が背景にあり,これを一概に非難するわけには行かない。


参考資料
1)  日本海軍艦艇写真集5,光人社,p.81,1996,¥1,262

更新履歴

初掲載  不明
Ver.2.0  1999.09.20  参考資料追加
Ver.2.1 2000.02.08 缶の排気方式の解説追加