航空兵装

搭載機数
(あ号作戦)

戦闘機

零式:27

攻撃機

天山:18

爆撃機

99式+彗星
:27

偵察機

 

合 計

   75
飛行甲板 [m]

長 さ [m]

257.5

前部幅 [m]

18.0

中央幅 [m]

30.0

後部幅 [m]

27.0

高 さ [m]

12.51
(公試状態)

格納庫

段 数

2

床面積 [m2]

 

エレベータ数

2

魚雷積載数

91式改6型

45

爆弾積載数

800kg

90

250kg

468

60kg

468

30kg

144

合計 [T]

221

航空燃料 [T]

1,000

「大鳳は飛行甲板防御のため航空機搭載数の減少を忍んだ」1,2)

というのは基本的には誤解である。

 最も知られている搭載数は53機であるが,これは零戦よりはるかに大型の艦戦「烈風」や,艦攻「流星」を搭載する場合の計画値である。戦闘機に96艦戦を採用した場合,予備機を含めた総搭載機数は78機3)である。零戦を採用すれば75機弱と推測され,翔鶴の84機に対して減少数は10機程度である。防御力が画期的に強化されていることを考えれば,これは十分にリーズナブルな数である。実戦において「最強」ではないまでも,戦闘能力を喪失しにくいことから「最有力」空母であるといえる。

 大鳳の航空機格納庫は前後エレベータ間を全通する2段格納庫となっており,特に航空機搭載数を減少させているわけではない。しかし重心降下のため甲板数が翔鶴より1段減少しているため,特に居住区のスペースが圧迫されている。この居住スペースを確保するためと,格納庫側面防御のため,格納庫側面にうなぎの寝床状の細長い部屋を配置しており,その分格納庫の幅は圧迫されている。一方中央エレベータの廃止により搭載スペースは若干増加するが,下部格納庫の煙突近辺は煙路確保のため床面の右半分が斜めに盛り上がっておりここには航空機を置けない。

 これらが総合された結果が翔鶴に比べ約10機の減少である。減ってはいるが,一般に言われるほど大幅なものではない。恐らく甲板数を減らしながらいかに搭載機数を確保するかが本艦設計上の大きな課題だったと考えられる。同じく飛行甲板防御を行い,大鳳の参考にされたと思われるイギリスのイラストリアス級は,格納庫1段で忍び搭載機数は大幅に減少している。2段格納庫へ改良されたインドミタブル級でも,下部格納庫は上部格納庫の半分の長さで,搭載数は少な目である。下部格納庫も延長したインプラカブルに至り,72機と初めて十分な搭載数を実現した。第2次大戦中の空母として,恐らくこのインプラカブルが最優秀であり,大鳳は僅差で2位と考えられる。大鳳は重防御を施しつつかなりの搭載数を確保している点で優秀だが,その分居住性が犠牲となっていることも忘れてはならない。
  当初計画  一般的な数値 最終計画  あ号作戦 
戦闘機  96式:18+6 烈風:24 烈風:18+1 零式:27
攻撃機 97式:27+3 流星:25 流星:36
(7機露天)
天山:18
爆撃機 99式:18+6 99式
彗星:27
偵察機 彩雲:3+1 彩雲:6
(全機露天)
彩雲:3
合 計 63+15=78 52+1=53 60+1=61
(13機露天)
   75

 アメリカの空母に比べると,日本空母の排水量当たり搭載数はかなり少ないが,これは艦載機の主翼折り畳み機構が米国ほど徹底しておらず搭載スペースが大きいこと,特に下部格納庫の幅が狭く格納庫床面積はそれ程広くないこと,アメリカは定数の相当部分を露天繋止に充てたこと等による。

 エレベータが2基しか無く,しかもそれが格納庫の前後端に位置しており,なおかつ格納庫幅が狭いため,航空機の運用は翔鶴より相当困難だったと推測される。米エセックス級のような舷側エレベータなら防御の弱点にならないが,上段の格納庫だけに採用するとしても,乾舷の低い本艦での採用は困難だっただろう。米空母のように格納庫を1段とする代わり飛行甲板下にギャラリーデッキを設け,その床面を防御装甲とする方式なら重心降下の点でも有利である。本艦の飛行甲板はそれまでのような木甲板ではなくラテックス張りであった。全長は翔鶴より3.1m長いだけだが,エンクローズド・バウを採用したため飛行甲板長は15.3m長くなっている。

 本艦は重防御であるため他の艦より長く前線にとどまると予想され,爆弾と航空燃料は他艦の搭載機へも補給できるよう標準の2倍が搭載された。特に航空燃料はタイプシップとなった翔鶴に比べても2倍を積載している。爆弾搭載量も信濃に次いで日本海軍2番目の搭載量であった。


参考資料
1)  福井 静夫:日本の軍艦(13版),出版共同社,p.126,1979,¥1,800
2) 世界の艦船増刊第40集(481) 日本航空母艦史,海人社,p.60,1994,¥1,748
3) 日本海軍艦艇写真集6,光人社,p.127,1996,¥1,262

更新履歴

(初掲載 :不明)
(改訂2版:不明)
(改訂3版:不明)
(改訂4版:1999.01.10 米空母の艦載機搭載法を修正)