機関・航海

軸  数 4
機関形式 ・基数 艦本式ギヤードタービン4基
ボイラ形式・基数 ロ号艦本式 8基
蒸気温度 [℃]
  圧力 [atm]
350
30
出 力 [SHP] 160,000
速 力 [kts] 33.1
航続力 [nm/kts] 10,000/18
燃料積載量 [T]  
発電能力 [kW] 3,600(800×3,600×2)
機 関

 機関は翔鶴と同じで,2万馬力の缶8基,蒸気タービン4基により160,000馬力と,日本海軍の艦艇中では最高の出力だった。排水量が増加した分,翔鶴より若干低速になった。

 機関配置はボイラー8基,タービン4基を横に2基ずつ順番に並べたものである。これは空母翔鶴,重巡鈴谷・利根とも同じ配置であり,日本の高速大出力艦の標準的な機関配置である。被害分散の見地からは各軸の主機を前後にずらして配置した英米のシフト配置に劣っているが,重防御の大型艦では問題とはなりにくい。また左右の缶・主機の間に中央隔壁を持つため片舷浸水時に傾斜増加を招きやすいと言われる。しかし空母隼鷹は片舷主機室に浸水した際に中央隔壁の存在により反対舷主機で帰投可能となった例があり,傾斜抑制と推進力保持のどちらを優先するかは難しい問題である。

 なお「シフト」配置とは必ずしも「缶-機関」の交互配置を意味する用語ではなく,機関を前後にずらすことを意味する。例えば2軸艦なら両舷の主機を左右に並べず前後にずらし,各々独立した主機室に置く。この主機室には中央隔壁を設けず,1箇所の被弾では一方の主機は無事なまま,片舷浸水による傾斜も局限できる。このように「主機を前後に分散配置」する方式をシフト配置と呼び,缶と主機の「交互配置」とは異なる意味である。ノースカロライナ級の戦艦では機関室を直列に4つ設け,各機関室に主機1・缶2を配置して1軸を駆動する。したがって2軸の同時損失も,片舷浸水による傾斜も防ぐことができる。

吸排気経路

 他の日本空母と違い,大鳳の艦橋は吸排気塔としての機能が大きい。艦橋として機能するのは前方1/3で,後方は煙突及びボイラーへの吸気通路である。以前の日本空母は吸気孔が左舷にあり,ミッドウェー海戦で火炎を吸気孔から缶室へ吸い込んで運転不能になったことがあった。大鳳は吸気経路を左右切り替え可能であり,火災の場合は艦橋を風上に向け艦橋からの吸気を行えばその問題を回避できる(火災が発生すれば,艦の中枢である艦橋は当然風上に置く。逆に言うと左舷の吸気孔は必然的に火炎を吸い込む)。

 また重心降下のために甲板が一段減少し飛行甲板高さが低いため,翔鶴のような舷側煙突では傾斜時に水没の恐れがあり艦橋と一体化した煙突へと変更された。これは風洞実験および空母隼鷹での先行試験の結果採用された方式で,外側へ26度傾斜しており,実績は良好だったといわれる。従来の湾曲式舷側煙突に比べ,煙突後方の対空火器などへの煙害が少なかったはずである。米空母は外側への傾斜のない直立式だが,この辺りも日本独特の細かな設計が感じられる。

航洋性

 就役期間がわずか3ヶ月しかなく,運用実績が残されていないので推測の域を出ないが,本艦の航洋性は日本海軍艦艇中最高だったと推測される。まず空母は全艦艇中最も航洋性に優れた艦種である。これは大型であると同時に,戦艦と違って巨砲を搭載するための制約を受けず,船舶としての主要性能を追求しやすいためである。艦種が同一なら,一般に大型の方が航洋性はよい。翔鶴級の航洋性は非常に良好だったが,大鳳は同じ大きさながら次の3点によってさらに向上したと思われる。

1. エンクローズド・バウを採用したため,凌波性が高い。
2. 船体最上部に質量の大きな装甲鈑(推定1,600t)を持つため首尾線回りの慣性モーメントが大きく,ローリング(左右動揺)周期が長い。
3. 排水量が大きいため慣性が大きく,ピッチング(前後動揺)周期が長い。

特に2.と3.は艦載機にとっても着艦がし易くなる利点がある。


更新履歴

初掲載  不明
Ver.2.1  1999.03.12  シフト配置の説明を修正
Ver.2.2 2000.01.23 「吸排気系路」追加,シフト配置の説明修正