技術ノート

技術ノート

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■可変排気ノズルの次元数

飛行機の話になりますが,航空雑誌などでしばしば「F-22は長方形断面の2次元排気ノズルを装備」といった表現を見かけますが,2次元とは別に断面が長方形という意味ではありません。「次元」とは「可変機構の自由度」を意味し,2次元可変ノズルなら2種類の可変パラメータ,つまり「排気流速(排気口断面積)」「排気方向」の2要素を制御可能ということです。

ここで排気ノズルの次元数とその可変パラメータ,装備実例を表にします。

表 可変排気ノズルの次元数
次元数 可変パラメータ 装備例

0次元

なし(固定式) ・通常のジェット旅客機
 B-747,A-320など
・アフターバーナー非装備の軍用機
 A-7,A-10など

1次元

1.排気流速(ノズル断面積) ・アフターバーナー装備のほとんどの機体
 F-4,F-14,F-15,F-16,F/A-18など
 コンコルド,Tu-144など
1.排気方向(上下) ・AV-8 ハリアー

2次元

1.排気流速(ノズル断面積)
2.  方向(上下)
・F-22 ラプター
・スホーイSu-37

3次元

1.排気流速(ノズル断面積)
2.  方向(上下)
3.  方向(左右)
・存在せず

4次元

1.排気流速(ノズル断面積)
2.  方向(上下)
3.  方向(左右)
4.  回転(進行方向回り)
・存在せず

最後の3・4次元ノズルは実在しませんが,排気口内側にタービンの可変静翼のようなものを取り付け,排気流に任意の回転運動を与えれば反動としてロール・モーメントが発生します。この機構を3次元可変ノズルに追加すれば,4つの制御機構を持つ4次元可変ノズルということになります。

またパラメータの組合せは自由なので,例えば「排気流速,左右方向」を制御可能な2次元ノズルもあり得ます。ただ通常はピッチ制御の方がヨー制御より優先されるので実例は無いと思います。またロケットエンジンのノズルにはジンバルやベーンにより上下・左右の方向制御を持ち,かつ流速制御はないものが多くありますが,これも2次元可変ノズルといえるでしょう。


(2001.02.23初掲載)



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