| 5.対空戦闘 |
1800時過ぎ,ビスマルクはプリンツ・オイゲンを切り離すための陽動作戦を開始,右舷に回頭し追跡中のイギリス艦隊に接近して主砲を発射した。イギリス側も応戦したが,射距離が遠く双方とも命中弾はなかった。この隙にプリンツ・オイゲンは南下を続け,イギリス艦隊の追撃から逃れた。単艦となったビスマルクは南西に進路を取り,燃料節約のため速力を21ktに落とした。
2200時,ビスマルクに100nmまで接近した空母ビクトリアスは,手持ちの攻撃機の全力である旧式の複葉機ソードフィッシュ9機を発進させた。1時間半後に編隊はビスマルクを発見,攻撃を開始した。雷装により100ktの速度しか出ないソードフィッシュに対し,ビスマルクは主砲を含めた全砲門で応戦した。この戦闘で魚雷1発がビスマルクに命中したが,浅深度だったためバルジではなく水線直下の320mm装甲に命中,船体に被害は生じなかった。しかし衝撃により付近の甲板にいた乗員の1名が叩きつけられて死亡,6名が骨折し,ビスマルク初の死傷者を出した。また激しい回避運動と砲撃の衝撃により過去の損傷部の浸水が増加し,ボイラー室の一部も浸水で使用不能になった。一方イギリスの攻撃隊は命中弾こそ受けたものの,低速にもかかわらず1機の損失もなかった。
翌5月25日0306時,ドイツのリュッチェンス司令官はイギリスの追撃に対する回避行動をおこなった。イギリス艦隊はビスマルクの左舷後方を,Uボートの攻撃を警戒してジグザグ航行していた。そのため左舷に進路を取ったときは15分間ほどビスマルクがレーダーの探知距離外になった。距離が離れたとき,ビスマルクは27ktに増速すると同時に右舷に120度転舵してイギリス艦隊右舷側方となる西へ遠ざかった。10nmほど走ってから今度は英艦隊と反航する形で北に向かって進み,さらに東へ進路を変えてイギリス艦隊の後方を横切り,その後は南東に進路を取りフランスをめざした。イギリス艦隊は予定の時刻になってもビスマルクがレーダー上に表れず,西へ変進したと考え追跡したものの再探知できない。0406時「敵との接触を失った」との無線が放たれた。
参考資料
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