| 7.アーク・ロイヤル |
H部隊はジェームズ・サマヴィル中将に指揮され,その中核は巡洋戦艦レナウン,空母アーク・ロイヤル,軽巡洋艦シェフィールドだった。しかしフッドよりさらに古く,小型で攻防力とも劣るレナウンや,まして軽巡のシェフィールドが強大なビスマルクと戦うことは,あまりに危険が大きかった。唯一ビスマルクを牽制できるのはアーク・ロイヤルだけだったが,その攻撃力は旧式なソードフィッシュだった。前日のビクトリアス機の攻撃でも,魚雷を命中させたにもかかわらずビスマルクはびくともしなかった。致命傷を与えるのは不可能に近い。しかし "運が良ければ" ビスマルクの足止めができるかもしれない。そうすれば後方からキング・ジョージ5世やロドネーが追い付ける可能性もある。そしてアーク・ロイヤルのパイロット達は,英海軍航空隊の中でもっとも経験豊富だった。
1450時,空母アーク・ロイヤルから15機のソードフィッシュがビスマルクを目指して飛び発った。サマヴィル中将は同時に海上からビスマルクとの触接を維持すべくシェフィールドを先行させた。しかしシェフィールドの派遣を知らされなかった攻撃隊は,シェフィールドをビスマルクと誤認,攻撃してしまう。しかし魚雷の磁気信管が過敏でほとんどは着水と同時に爆発し,残りもシェフィールドの回避運動により被害はなかった。攻撃隊は帰投し,1740時にシェフィールドはビスマルクを視界に捉えた。
攻撃失敗の報を受けたトーヴィー大将は海軍省宛に,ビスマルクを減速させられなければ燃料補給のため帰投せざるをえないと打電した。軍令部長ダドリー・パウンド元帥の返答は「あらゆる犠牲を払ってもビスマルクを撃沈せよ。その結果KGV(キング・ジョージ5世)を曳航することになってもやむなし」という無茶なものだった。いずれにしろKGVもロドネーも航続力の限界に近く,ビスマルクはドイツ空軍の制空圏に近づきつつあった。アーク・ロイヤルを第2次攻撃隊が出発したのは1915時だった。ビスマルクを仕留めるには,これが最後のチャンスだった。
参考資料
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