| 8.運命の一撃 |
第2次攻撃隊は2000時にシェフィールド上空に達し,その指示にしたがって攻撃に向かったが,目標が見つからず30分後に戻ってくる。2度目の指示にしたがって再度攻撃に向かった。そして2054時,攻撃隊はビスマルク上空に達し,ビスマルクには空襲警報が発令される。数分後,攻撃機は海面上300mの低い雲の下へ降下し,一斉に攻撃を開始した。今回の攻撃の成否が何を意味するかをパイロットは承知しており,前日のビクトリアスの攻撃を上回る激しさでソードフィッシュは襲いかかった。1〜3機の単位で超低空からビスマルクに接近し,触発信管に付け替えた魚雷を放った。
ビスマルクは主砲を含めた全火器で応戦し,発砲の火炎が艦全体を覆い,振動させた。小口径の火器は直接艦載機をねらい,大口径の火器はあるいは敵機の直前の海面を打って水柱で撃墜しようとし,あるいは航走する雷跡をめがけて発射し魚雷を誘爆させようとした。艦橋ではリンデマン艦長が攻撃を回避するため次々と操艦命令を下していた。魚雷をかわそうと左右に転舵するたびに艦は大きく傾斜し,魚雷をやり過ごすためエンジン全閉と全開を繰り返すたびに艦全体が振動した。一方激しい回避運動は対空射撃を行うものにとっては大きな障害になり,ソードフィッシュは固定脚がしぶきを浴びるほどの低空で飛来するので照準は困難だった。最終的には,この日の対空戦闘でも撃墜できた敵機は1機もなく,ビスマルクの対空攻撃力はかなり不十分なものだった。
攻撃隊からはぐれた3機のソードフィッシュがビスマルク攻撃に参加したのは,戦闘開始から20分ほど経過したときだった。1機は高度15mで左舷から近づき700mで魚雷を発射した。魚雷は2105時,左舷機械室横の舷側装甲の直下に命中し小さな損傷と浸水をもたらしたが,ビスマルクにとってはほとんど問題にならなかった。
ビスマルクの艦尾に1発の魚雷が命中したのは,攻撃が終了する間際の2115時だった。爆発の衝撃で艦尾が跳ね上げられ,弾力性のある船体が弓なりに振動し,艦尾にいた人間は足元をすくわれた。舵角12度で取り舵回頭中だったビスマルクの舵は,そのまま動かなくなった。艦尾に命中した魚雷に舵取り機室を破壊され,ビスマルクは大きく2回円を描いてから停止した。
小型の航空魚雷などものともしない堅艦ビスマルクは,奇跡に近い偶然により舵に受けた1発の魚雷により,行動不能に陥った。
参考資料
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更新履歴
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